玄関プランの考え方
玄関は、来客にとっては一番最初に住まいに入る所ですし、家族にとってはスムーズに出入りできる場所です。
しかし、一般的には単なる移動空間としてとらえられていますが、ひと工夫すれば、生活空間に広がりやうるおいを与えてくれるのです。
そこでどうすれば、玄関を快適空間にすることができるのか考えていきましょう。
玄関を多目的空間に
玄関は、単に人が出入りする移動空間ではなく、生活空間に広がりを自他もたせるなどすれば、快適な玄関空間をつくることができるのです。
たとえば、玄関を多目的に使える空間として考え、少し広めに確保することにより、三和土(たたき)やホールに小ぶりのコーヒーテーブルやチェアを設置すれば、かつてのぬれ縁や縁側のような感覚で、近所の人たちとの語らいの場として使うことができます。
通常の建て売り住宅では、玄関スペースが狭い場合が多くあります。
玄関が狭いとコートを脱いだり着たりするにも窮屈です。
そこで玄関を広めに確保し、コート掛けなどを設置すれば、玄関でコートを脱げますので、家族の中に花粉症などのアレルギー体質の方が居ても、室内まで花粉を持ち込む心配がありません。
玄関ホールに姿見鏡が設置されていれば、外出前に身だしなみが整えられて便利で、玄関の空間にも広がりが生まれます。
シューズボックスの設置にも工夫
敷地も大きく玄関を広く確保することができれば、シューズクローゼットを造作でつくっておくと、ゴルフバッグやサーフボードなどのスポーツ用品やベビーカー、三輪車といった子供の玩具なども収納することができますので、玄関回りをスッキリさせることができます。
逆に敷地などの関係で、玄関スペースを広く確保できない場合は、シューズボックスを床から上げ、廊下側にはみ出るようの取り付けることにより、奥行きのある玄関にすることができます。
また、シューズボックスは、カウンタータイプのものではなく、トールタイプのほうが収納力もあり、長尺物を収納するときも便利です。
トールタイプでもロータイプでも、シューズボックスを設置する場合、壁厚を利用して埋め込み収納にすることで、玄関を広く使えることができます。
玄関の採光と通風
玄関の場合、意外と自然の光や風を取り入れにくい空間です。
しかし、多くの方は、玄関を出入りする際に風が入るのではと思いますが、一般の家庭では頻繫に出入りすることがなく、出入りに要する時間も数秒から数十秒程度ですので、通風の効果を得ることができません。
通常の戸建て住宅ですが、玄関と道路の距離が短いですので、窓を大きくとるわけにはいきません。
では、どうすればよいのかですが、玄関ドアの上部に通風効果も兼ねて引き違い窓を設置するという方法や、外部に面した壁にシューズボックスを設置する場合、上下にフィックス窓を設けるといった方法もあります。
上部や上下部に窓を設けることにより、床や天井を広く見せる効果もあります。
また、玄関ドアの壁を利用して縦長の開口を設け、モザイク硝子や硝子タイルを貼ることにより自然の光を取り込むことができますし、モザイク硝子又は硝子タイルを使用しますのでプライバシーも確保することができます。
玄関プランニングのポイント
玄関をプランニングするポイントですが、三和土(たたき)は、靴やコートの脱着が楽にできるスペースが確保できればベストですが、確保することが困難な狭い敷地では、玄関とリビングを一体化させるオープンプランもあり、このプランの場合でしたら玄関を広く使うことができます。
また、傘立てやスリッパ立ての置き場を決めます。
この時、スペースに余裕が無い場合は、シューズボックスに組み込む、あるいは壁厚を利用して埋め込むなどの工夫が必要となります。
玄関を広く見せるあるいは奥行を出すには、上がり框を低く設定し、ポーチと三和土、ホール、廊下を同じ材料で揃えることにより奥行きを出す事ができます。
高齢者を重視した玄関プラン
高齢者と同居することを考えた場合、バリアフリーな住まいにする必要があり、車イスの対応は避けては通れません。
玄関は、人が出入りができ、靴を脱ぐスペースがあれば最低限の機能を果たすことができますが、高齢者の方と同居を考えるのであれば、車イスを将来的に使用することも考慮し、車イスの通りやすさや歩きやすいスロープ、必要な個所に手すりを付けるなど色々な機能が必要となります。
・車イスを使用できる大きさは
一般的な戸建て住宅の出入口や廊下の副は約75㎝で、車イスが通行しやすい幅ではありません。
通常使用する車イスの幅ですが、60㎝~70㎝程度あり、自走するにも、介護者が押すにしても、壁に手がぶつかりやすく、また奥行きが1m~1.2mほどありますので、90度の角度で曲がるのも大変です。
・車イスで自立した生活を送るには
現在の住まいでは車イスで自立するには幅が狭いため、壁を移動するなど根本的な改修が必要となりますが、広い住まいなら間取りの変更や設備の取り付けなど比較的容易なのですが、狭小住宅の狭い玄関だと工夫が必要となります。
玄関前に段差があれば段差を解消するため、玄関を半間(約90㎝)減築し、車イスでそのまま玄関へ入れるようにスロープを設けます。
玄関間口の変更ができれば、次に玄関扉です。
アプローチに対して直角のままでしたら、開口部の内側の寸法は75㎝~80㎝程度しか確保できず、車イスでの出入りが不自由です。
そこで扉を片引き戸にすれば、玄関の間口を最大限に使うことができ、また引き戸ですので扉を固定する必要もなく、一人で出入りすることもできます。
少し贅沢を言えば、玄関の間口は、十分確保したいもので、玄関扉は90㎝程度あれば十分ですが、玄関ホールの幅は二人が同時に靴を脱げる1.2mの幅が確保できれば、後からスロープを設ける場合でも、これだけのスペースがあれば邪魔にはなりません。
まとめ
玄関は単なる移動空間や出入り口だけではありません。
玄関はちょっと油断すれば乱雑になってしまうことが多くありますので、収納計画をきっちりとすることが必要です。
また玄関をプランニングする場合、できるだけ広く確保することが望ましいのですが、狭小住宅では限界がありますので、壁面収納にするなどの工夫が必要になりますし、採光や通風計画も同時に行うことが大切です。
将来のことを考えて、車イスなどを使用することも視野に入れることが重要です。