住宅ローン減税の緩和措置「すまい給付金」
平成25年10月1日の閣議決定により消費税が5%から8%に引き上げられ、一時的な税負担の増加による影響を平準化するため、住宅ローン減税では、限定的な所得層に対して不公平が生じ、それを緩和するためにすまい給付金制度ができました。
しかし、また、今年の10月1日より消費税が10%に引き上げられますが、それに伴いすまい給付金制度はどうなるのか調べていきましょう。
すまい給付金とは
すまい給付金とは、引上げ後の消費税率が適用される住宅を取得する場合、引上げによる負担を軽減する制度です。
住宅ローン減税は、支払っている所得税などから控除する制度ですので、収入が低いほどその効果が小さいのです。
そこで登場したのが、すまい給付金制度で、住宅ローン減税の拡充による負担軽減効果が不十分な収入層に対して、住宅ローン減税とあわせて消費税率引き上げによる負担の軽減を図るもので、収入によって給付額が変わる仕組みになっています。
すまい給付金の対象者
すまい給付金は、住宅を購入し、登記上の持ち分を保有して、その住宅に自分が住まうことが前提であり、収入が一定以下の方が対象となります。
また、住宅ローンを利用しないで住宅を取得する現金取得者の方については、50歳以上であることが条件となります。
対象者の主な要件
住宅の所有者の要件としては、不動産登記上の持分保有者であることですが、単に所有しているのではなく、所有した住宅の移住者であることなのです。
つまり、住民票において取得した住宅への居住が確認できなければいけないということになります。
収入面においては、消費税が8%の時は、収入額の目安が510万円以下、消費税が10%の時は、収入額の目安が775万円以下でなければならず、住宅ローンを利用しないときは、年齢が50歳以上でなければいけません。
すまい給付金の対象となる住宅の要件
すまい給付金は、良質な住宅ストックの形成を促す目的もあるため、住宅の質に関する一定の要件を満たした住宅が対象となります。
中古住宅については、宅地建物取引業者(不動産会社など)による売買物件で、消費税の課税対象となる住宅が対象となり、個人間売買(不動産会社などは仲介のみ)の中古物件は、消費税が非課税となっていますので対象とはなりません。
対象物件の主な要件
対象となる物件ですが、引上げ後の消費税率(現行は8%、令和元年10月1日より10%)が適用されることが必須の条件で、これに付随して床面積が50㎡以上であること、第三者機関の検査を受けた住宅であることです。
すまい給付金制度の実施期間
すまい給付金制度は、消費税率の引上げられる平成26年4月以降に引き渡された住宅から、税制面での特例が措置される令和3年12月までに引き渡され入居が完了した住宅を対象に実施されます。
すまい給付金の申請方法
すまい給付金の申請は、住宅取得者(持分保有者)がそれぞれ行います。
たとえば、1つの住宅に居住する不動産登記上の持分保有者が複数名(親子・夫婦など)いる場合は、それぞれ申請することになります。
また、取得した住宅に居住した後に、給付申請書に必要書類を添付して申請することが必要となります。
申請は全国に設置するすまい給付金申請窓口への持参、または、すまい給付金事務局への郵送により行うことができます。
給付額について
給付額は、住まいを購入した人の収入及び不動産登記上の持分割合により決まります。
具体的には、持分保有者1名の場合の給付額を給付の基礎額とし、収入に応じて決まる給付基礎額に持分割合を乗じた額が給付額となります。
収入についてですが、給与所得者(サラリーマンなど)の給与明細書などに記載されている「額面収入」ではなく、都道府県民税の所得割額に基づいて決められますので、給付申請をするときは、必ず引っ越し前の住宅の所在する市区町村発行の個人住民税の課税証明書(以下「課税証明書」といいます。)を入手して、都道府県民税の所得を確認してください。
収入について
給付額を算定する給付基礎額は、収入に応じて決まります。
すまい給付金制度では、収入(給与等)を全国一律に把握することが難しいため、収入(給与等)に代わり、収入(給与等)に応じて決まる、都道府県民税の所得割額を用いて給付基礎額を決める仕組みになっています。
都道府県民税の所得割額と課税証明書(非課税証明書)とは
都道府県民税の所得割額ですが、市区町村が発行する課税証明書(住民税が非課税者の場合は非課税証明書)により確認します。
課税証明書は、発行年度の前の収入(給与等)により決定される都道府県民税の所得割額が証明されます。
ところで前の収入(給与等)とは、たとえば平成30年度の課税証明書であれば、平成29年1月1日~12月31日の収入(給与等)をいいます。
すまい給付金制度では、新たに取得する住宅の引渡し時期により確認する課税証明書の発行年度が、決まっていますので注意してください。
課税証明書発行時期と証明される所得期間の関係
所得を証明する課税証明書は、毎年6月頃に前年度分の所得に更新されるのですが、市町村によって切り替え時期が異なるため、すまい給付金制度では7月1日を全国共通の切り替え時期とされています。
収入と都道府県民税所得割額とは
都道府県民税の所得割額は、給与所得者の額面収入(総支給額)から経費相当額(給与所得控除)や世帯属性に伴う控除などの、各種項目を控除した額に都道府県民税を乗じた額から調整控除の額を引いて算出します。
新築住宅の給付要件とは
対象となる新築住宅の要件ですが、人の居住に供したことのない住宅であり、工事完了から1年以内のものをいいます。
またここでいう住宅とは、人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分をいいます。
新築住宅及び住宅の定義は、住宅の品質確保の促進等に関する法律や、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律における扱いと同じです。
住宅ローンを利用して新築住宅を取得した時の給付要件
給付の要件で最も重要なのが、床面積が50㎡以上あるということで、これは以下に述べる物件全てに当てはまる事項です。
しかし、ここでいう床面積とは、不動産登記上の床面積をいい、共同住宅(マンションなど集合住宅)の契約書等に記載されている壁芯寸法(壁の中心から中心による面積)でなく、内法寸法(壁と壁の間の寸法)による面積となりますので注意してください。
不動産登記規則による床面積の定義
(建物の床面積)
第百十五条 建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、切り捨てるものとする。
施工中の検査
施行中等に第三者の現場検査をうけ、一定の品質が確認されなければいけないため、次の条件のいずれかに該当しなければなりません。
・住宅瑕疵担保責任保険へ加入した住宅
・建設住宅性能表示を利用する住宅
・住宅瑕疵担保責任保険法人により保険と同等の検査が実施された住宅
現金で新築住宅を取得した時の給付要件
床面積に関してはローン取得と同じです。
施工中の検査
以下の条件のいずれかに該当する住宅
・住宅瑕疵担保責任保険へ加入した住宅
・建設住宅性能表示を利用する住宅
・住宅瑕疵担保責任保険法人により保険と同等の検査が実施された住宅
その他の要件
年齢が50歳以上の者が取得する住宅で、ここでいう年齢とは、給付を受けようとする住宅の引渡しを受けた年の12月31日時点での年齢を言います。
消費税率が10%となった場合の収入ですが、収入額の目安が650万円以下(都道府県民税の所得割額が13.30万円以下)の要件が追加されます。
住宅金融支援機構のフラット35Sと同等の基準を満たすことが給付要件となっており、フラット35Sの基準は以下です。
・耐震性に優れた住宅(耐震等級2以上の住宅または免振建築物)であること。
・省エネルギー性に優れた住宅(一次エネルギー消費量等級4以上または断熱等性能等級4であること)
・バリアフリー性に優れた住宅(高齢者等配慮対策等級3以上)であること。
・耐久性・可変性に優れた住宅(劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2等)であることの4項目です。
中古住宅の給付要件とは
給付の対象となる中古住宅ですが、売主が宅地建物取引業者(不動産会社など)である中古住宅(中古再販住宅)だけです。
つまり、売主が個人で宅地建物取引業者が仲介するだけの中古住宅の場合、消費税の課税対象外となるため給付の対象から外れることになります。
住宅ローンを利用して中古住宅を取得した時の給付要件
床面積等の要件については、住宅ローンを利用した場合の新築住宅と同様となりますが、売買時に第三者の現場検査を受ける必要があり、現行の耐震基準及び一定の品質が確認されなければならず、また以下の項目のいずれかに該当しなければなりません。
・既存住宅売買瑕疵保険へ加入した住宅であること。
・既存住宅性能表示制度を利用した住宅(耐震等級1以上のもに限る)でありこと。
・建設後10年以内であって、住宅瑕疵担保責任保険に加入している住宅又は建設住宅性能表示を利用している住宅であることの3項目です。
現金で中古住宅を取得した時の給付要件
床面積や売買時等検査項目については、住宅ローンを利用した場合と同様です。
また年齢については、現金で新築住宅を取得した場合と同様となっています。
まとめ
住まいを住宅ローンを利用して取得した場合も現金で取得した場合でも、すまいの給付金制度を利用することができます。
また、住宅についても新築・中古住宅どちらでも、条件を満たしておれば給付制度を受けることができます。
すまい給付金は、消費税率の引上げに対して、住宅取得者の負担を緩和するための制度です。
その為、個人間で売買される中古住宅の場合、消費税が非課税の場合は利用することができませんので、ご注意ください。
あくまでも、この制度は消費税を基準にしている制度なのです。
現在、住まいの購入を検討されている場合、すまい給付金を含めいろいろな軽減措置を受けられることがありますので、よく調べて利用できるモノは利用して少しでも負担を軽くするようにしましょう。