低炭素建築物のメリットとは

昨今、地球温暖化に対して温室効果ガスの排出量について、全世界で問題視されており、それが住宅にも影響を及ぼしています。

温暖化に対して温室効果ガスの排出量が低い住宅が求められ、平成24124日に施工された「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」に基づいているのです。

 

そこで、低炭素建築物とはどのようなものか、低炭素建築物の基準は何か、また、どのようなメリットがあるのか調べていくことにしましょう。

 

エコまち法による低炭素建築物とは

エコまち法とは、都市の低炭素化を図るために都市機能の集約化、公共交通機関の利用促進、建築物の低炭素化・緑・エネルギーの面での管理・利用の促進など低炭素な街づくりを目指す法律です。

エコまち法に定める低炭素建築物とは、建築物における生活や活動に伴って発生する二酸化炭素の排出を、抑制するため低炭素化に資する措置が講じられている、市街化区域等に建築される建築物を指します。

 

低炭素化に資する措置とは以下のことを指します。

(1)省エネルギー基準を超える性能をもつこと、かつ低炭素化に資する措置を講じていること。
(2)都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること。
(3)資金計画が適切なものであること。

*(1)の省エネルギー基準を超える省エネルギー性能とは、外皮の性能及び一次エネルギー消費量の基準について一定以上の性能を有することを指しています。

 

またこれら(1)~(3)のすべてを満たした建築物について、所管行政庁(都道府県、市または区)に認定の申請を行うことにより、低炭素建築物として認定を受けることが可能となります。

 

低炭素住宅は市街化区域を中心に普及

市街化区域を中心に普及させる理由の一つとして、温室効果ガスの排出量を抑制するには、家屋が集中していない地域より、エネルギーを大量に使う都市部で、総合的に実施することにより効果が見込めるということです。

 

省エネルギーや二酸化炭素排出の抑制などを目的として、国としても市街化区域などにおいて住宅の低炭素化を推進しており、2020年度にはすべての新築住宅が新たな省エネ基準に合致するよう義務付けられていたのですが、2018123日の国土交通省の部会(有識者会議)で、2020年から義務化が予定されていた「省エネ住宅の義務化」を撤回する方針案が了承されましたが、住宅以外の床面積300㎡~2000㎡の中規模建築物は省エネ適合率が91%(2017年度)で事業者も省エネ基準に習塾、新築件数も少なく行政の対応能力もあるなどとして、問題はないと判断され新たに義務化されることになります。

 

ところで、一般住宅の義務化が見送られた理由には、小規模な住宅(戸建てなど)に限っては、義務化するとついていけないハウスメーカーや工務店、設計事務所があるためとされています。

 

しかし、「省エネ」「創エネ」「畜エネ」などを駆使して、「ゼロエネルギー住宅(ZEH)」を見据えており、2030年には新築住宅の平均でゼロエネルギー住宅を、2050年にはすべての住宅でゼロエネルギー住宅とする目標が示されています。

また、オフィスビルや商業施設など2000㎡以上の建築物を皮切りに、300㎡以上の建物、そして全ての戸建ての新築住宅と段階を追って義務化していってますが、商業施設などでは既に省エネ化を本格化してきています。

 

低炭素住宅の認定条件

例えば、木造住宅を新築する場合ですが、省エネ法で、定める省エネルギー基準の一次エネルギー消費量の10%を超える省エネ性能を有しており、節水対策もしていることが条件となります。

 

省エネルギー基準の一次エネルギーとは、身の回りにあるエネルギーの元になるものをいい、ガソリンであれば原油、都市ガスであれば天然ガスといった、地球上に存在する天然のエネルギーのことを指しています。

 

低炭素住宅の認定基準は外皮の熱性能なのです。

即ち、住宅の屋根・壁・窓と床下の断熱性能と石油、石炭、水力などの一次エネルギー消費量の削減にあります。

 

市街化区域区内(都市部)に建てられた建築物が対象となり、以下の基準を満たすことで所管政庁(都道府県、市または区)に申請を行うことにより低炭素建築物の認定が受けられるのです。

 

・省エネルギー基準を超える省エネルギー性能を持つこと、かつ低酸素化に資する措置を講じていること。
・都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること。
・資金計画が適切であること。

 

低炭素住宅の認定基準

低炭素住宅の認定を受ける基準ですが、省エネ法で定める省エネ基準(平成25年)の一次エネルギー消費量から、さらに10%超えることとなっており、一次エネルギー消費量とは石油や石炭・天然ガスを言い、二次エネルギーである電気やガスなどは、それぞれ計画単位が異なりますので、一次エネルギーに換算して消費量を比較できるようにしているのです。

 

省エネ基準は、1979年(昭和54年)に「エネルギーの使用の合理化に関する法律(通称:省エネ法)」が制定されて以来、1980年(昭和55年)に初めて省エネ基準が告知され、その後は1992年(平成4年)に新省エネ基準が1999年(平成11年)に次世代省エネルギー基準が改善・強化されてきたのです。

 

東日本大震災を経て、2013年(平成25年)に改正省エネルギー基準が制定され、低炭素住宅はこの基準を満たすように求めています。

 

低炭素住宅の認定を受ける基準には、もう一つ選択的な項目があります。

その選択的な項目というのが、4つの対策分類中の8項目の低炭素化への取り組みの2つ以上を選択し実施するというものです。

その4つの対策とその中からの8つの選択的項目が下記です。

 

1)節水対策

1)節水に資する機器を設置する

設置する便器や水栓の半数以上に節水措置が取られていること。また食器洗い機が設置されていること。

2)雨水、井戸水又は、雑排水の利用設備を設置している

貯水タンクなどの雨水の再利用装置などが設置されていること。

 

2)エネルギーマネジメント

3HEMS(ホームエネルギー・マネージメント・システム)を設置すること

HEMSとは、電気・ガス・水道などと連携し、使用料を項目単位で把握することができるシステムで、エネルギー使用の「見える化」を実現し、節電対策に必要なデーターを提供してくれます。

4)太陽光等の再生可能エネルギーを利用した発電設備及び、それと連携した定置型の蓄電池を設置すること。

 

3)ヒートアイランド対策

5)一定のヒートアイランド対策を講じている

これは主に大規模マンションやオフィスビルなど住宅以外に講じられる措置で、都市部の高温化を抑制する対策です。

 

4)建築物(躯体)の低炭素化

6)住宅の劣化の軽減に資する措置を講じている

劣化対策によって住宅を長寿命化すれば解体時に排水される産業廃棄物の総量が削減でき環境負荷の低減に貢献できる。

 

7)木造住宅若しくは木造建築物であること

木造住宅の材料に由来するCO₂排出量は、RC造りに比べ約3割程度といわれていますので、低酸素化に貢献していると言えます。

 

8)高炉セメント又はフライアッシュセメントを構造耐力上主要な部分に使用している

高炉セメント又はフライアッシュセメントはその製造時のCO₂排出量が低く、低炭素化に貢献します。

 

低炭素住宅の認定手続きについて

低炭素住宅の認定手続きを行う時、一戸建ての場合は、その住戸ごとに認定を受けます。

しかし、マンションの場合は、個別住戸ごとか建物全体の認証になります。

 

1.申請者は、建築物の着工前に審査機関に事前の技術的審査を依頼します。申請が受理された後に工事を着工することができますが、認定されなかった場合は、再度申請することはできません。

2.事前の技術的審査を受け審査機関より適合証の発行を受けます。適合証の交付は、所管行政が定めた認定基準について適合していることを証明するものです。

3.事前の技術的検査に適合していることを証明する適合証を添付し、所管行政庁に認定申請証を提出します。

4.認定は所管行政庁(建設主事がおかれている市区町村)が行い、認定証が交付されます。なお、申請手数料ですが、所管行政庁毎に異なってくるのですが、約4,000円~5,000円です。

 

低炭素住宅のメリットとは

低炭素住宅の認定を受けることにより、優遇措置も受けることができ、特に建築する際に容積率が緩和されるということです。

また、登録免許税・所得税などが優遇されるのです。

 

光熱費を押さえることができる

住まいのランニングコストともいえる、ガス・電気・水道の消費量を節水対策や太陽光発電システム・屋根・壁などの断熱性の向上の対策を取り、低炭素化とともに長期間に渡り光熱費を削減することができるのです。

 

住宅ローン控除

令和312月迄、消費税が10%の適用時に住宅ローンの控除対象限度額が5,000万円で、ローン残高の1%を10年間に渡り所得税が最大で500万円が控除されます。

 

登録免許税の優遇措置

令和3331日までの優遇措置として、住宅の保存登記が一般住宅特例の0.15%が0.1%に軽減されるのです。

 

フラット35の金利の優遇措置

住宅金融支援機構と民間金融機関(銀行、信用金庫など)が、提携して供給しているフラット35の借入金利を当初の10年間に対し、0.3%引き下げたフラット35Sの(金利Aプラン)を利用することができるのです。

 

まとめ

低炭素建築物(住宅など)は、省エネの新基準とされる改正省エネルギー基準をも上回る省エネルギー性能を持つことにより、低炭素化を実現した建築物なのです。

 

新基準は、これまでの床面積のみにこだわっていた旧基準(次世代省エネルギー基準)を建物の表面積である外皮で考えることにし、一次エネルギー消費量で断熱性などを測るというように改正したのです。

 

今後、新築建築物を順次、低炭素化建築物としていき、2030年には、新築住宅の平均でゼロエネルギー住宅を、2050年にはすべての住宅でゼロエネルギー住宅とする目標が示されているのです。

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