長期優良住宅とは、またメリットとは
2019年10月1日より消費税率が引き上げられ、住宅の購入や増改築に影響があるように思われがちですが、消費税率が引き上げられたことにより優遇措置が緩和されるなど軽減措置が行われます。
そこで今回は、長期優良住宅とはどのような住まいなのか、またどういった優遇措置があるのか調べていきましょう。
長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、長期にわたって良好な状態で使用するための措置がなされている、優良な住まいのことを指しています。
ところで、従来の住まいの考え方は「つくっては壊す」すなわち、スクラップ&ビルド型の社会でしたが、「いいものを作ってきちんと手入れして長く大切に使う」ストック活用型の社会へと転換を目的として、長期にわたり住み続けられるため、以下のような措置が講じられた優良な住宅を普及させるため、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が平成20年12月5日に成立し、平成21年6月4日に施工されました。
1.長期に使用するための構造及び設備を有していること。
2.居住環境等への配慮を行っていること。
3.一定面積以上の住戸面積を有していること。
4.維持保全の期間、方法を定めていること。
この内、1については、建築物に関する技術的な基準で構成されており、その多くは住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく、住宅性能表示制度の基準を準備します。
また、これらの項目全ての措置を講じ、所管行政庁(都道府県、市または区)に認定申請を行えば、長期優良住宅としての認定を受けることが可能となっています。
これらの項目全てを講じ、所管行政庁の認定を受け、住まいを長期優良住宅にした場合に受けられる税金の優遇措置は多岐にわたっており、住宅ローン控除、不動産取得税、登録免許税、固定資産税などがあります。
長期優良住宅のメリット
先程少し触れましたが、長期優良住宅に認定された場合ですが、住宅ローン控除をはじめ、各種の税の優遇措置や住宅ローン金利面でも優遇されていたりしますので、長期優良住宅のメリットを細かく見ていくことにします。
住宅ローンが低金利で借りれる
住宅ローンで最も利用されるのが、住宅金融支援機構と民間金融機関(都市銀行、地方銀行など)が提携して貸し出す「フラット35」があります。
この「フラット35」には良質な住宅であれば、さらに低い金利が一定期間適用される「フラット35S」があり、長期優良住宅の場合、10年間に渡り貸付金利が0.25%引き下げられる金利Aプランが適用されます。
また、長期優良住宅は「フラット50」を利用することができるのです。
この「フラット50」ですが、返済期間が最長50年で、将来に住宅を売却した場合、次の購入者に住宅ローンを引き継ぐことができるのです。
つまり、住宅ローン残高ごと、次の購入者にバトンタッチできるというものです。
住宅ローン控除の優遇措置
住宅ローン控除とは、居住の用に供する家屋で、住宅の引渡し又は完了から6ヶ月以内に居住の用に供するもの、床面積が50㎡以上、店舗等併用住宅の場合には、床面積の1/2以上が居住用であること、借入金の償還期間が10年以上であること、合計所得金額が3.000万円以下である場合に、税務署に確定申告をすることによって受けられる所得税の控除のことです。
長期優良住宅で住宅ローン控除を受けた場合、住宅ローン控除の控除対象借り入れ限度額の優遇措置があります。
一般住宅の場合の限度額は、4.000万円となっていますが、長期優良住宅については、5.000万円まで引き上げられます。
そのため、控除率1%×5.000万円が控除額で、10年間で最大500万円の控除を受けることができます。
不動産取得税の優遇措置
不動産取得税とは、土地や家屋を購入したり、家屋を建築したりして、不動産を取得したときにかかる税金のことです。
またこの税は、有償であろうと無償であろうと、登記の有無にも関わらず売買、贈与、交換、建築(増改築含む)などによって取得した場合にかかり、床面積が50㎡以上240㎡以下で都道府県の条例で定める申告をした場合に、課税標準から一定の控除額を引いた後に、3%の税率を掛けて算出されます。
不動産取得税の控除額ですが、一般住宅の場合は、1.200万円が控除額となりますが、長期優良住宅については、1.300万円の控除を受けることができますので、税金が減額されることになります。
登録免許税の優遇措置
登録免許税とは、新築した場合や購入した場合などに、所有権保存登記というものを法務局に行います。
その保存登記にかかる税金ですが、一般住宅の場合、不動産の価格に対して0.15%かかります。
しかし、長期優良住宅は0.1%と軽減措置が受けられますし、その他所有権移転登記についても軽減措置が受けられます。
固定資産税の優遇措置
固定資産税ですが、床面積が50㎡以上280㎡以下の一般の戸建ての場合は3年間、一般のマンションの場合では5年間、それぞれ1/2減額される措置があるのですが、これが長期優良住宅になれば、一戸建てで5年間、マンションでは7年間、それぞれ1/2減額となる優遇措置が受けることができます。
長期優良住宅の認定を受けるための条件
長期優良住宅の認定を受けると、住宅ローン金利や税制上の様々なメリットを受けることができます。
では、認定を受けるための条件とは何なのかを見ていきます。
長期優良住宅の認定を受けるためには「性能項目」という、住宅の性能を様々な要素ごとに評価して、それらに適合していることを申請して初めて認定を受けることができます。
長期優良住宅の認定項目ですが、劣化対策、耐震性、維持管理.更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性、住居環境、住戸面積、維持保全計画などとなっていますので、個別に見ていくことにしましょう。
劣化対策
通常考えられる維持管理下で、建物を使い続ける期間が、100年以上になるような措置がされていることが必要で、マンションなどの鉄筋コンクリート造や、一戸建てなどの木造などの場合ごとに決められています。
耐震性
大規模地震などが起きた場合でも、建物の変形度合いを一定以下にする措置が講じられていることが必要です。
維持管理.更新の容易性
建物本体に影響を与えることなく、配管などの維持管理ができることや、配管の更新時の修繕が軽減される措置が講じてあることが必要です。
可変性
居住者のライフスタイルの変化に応じて、例えば家族が減ってリビングを広くするなど、間取りの変更工事が簡単にできる措置が講じられていることが必要です。
バリアフリー性
将来スロープを設置するなど、バリアフリーのための改修工事が行えるよう必要な措置が講じられている必要があります。
省エネルギー性
断熱性能を保つ措置が講じられている必要があります。
住居環境
例えば地域の地区計画に配慮した景観を損なわないようなデザインになっている必要があります。
住戸面積
概ね一戸建て住宅では75㎡以上、マンションなどの共同住宅においては55㎡の床面積があること、維持保全計画としては定期的な点検を実施する計画があるなどが必要です。
長期優良住宅の補助金
現在、住んでいる住宅を長期優良住宅にすることで補助金が出る制度があります。
新築住宅の場合
一定の条件を満たした地域の中小工務店が住宅を建てた時、上限100万円までが出る制度です。
中古住宅の場合
住まいのインスペクション、性能向上を図るリフォームや、三世代同居等の復数世帯の同居への対応に資するリフォームや、適切なメンテナンスによる既存住宅ストックの長寿命化に資する優良な取り組みに対して、事業の実施に要する費用の一部について支援する補助制度です。
条件を満たしたリフォームに関して、最大250万円まで補助金が出ます。
長期優良住宅の認定申請手続方法
長期優良住宅認定の申請手続きですが、登録住宅性能評価機関で事前審査(技術的審査)を受けた後に、所管行政庁へ申請するということになります。
この時、登録住宅性能評価機関が発行した「適合証」が必要となりますのでご注意ください。
また、所管行政庁においてさらに審査され、認定されれば「認定通知書」が発行されます。
申請の際には、認定手数料が必要で数千円~数万円かかりますので注意して下さい。
また、行政においては数千円ですが、事前に技術的審査を受けると条件にもよりますが、数万円の費用がかかってきます。
さらに条件以外にも地域などにもよって異なってきますので、登録住宅性能評価機関やお近くの所管行政庁で、費用を確認して下さい。
ただ、所管行政庁への認定申請は必ず着工前に行うことが必要となります。
標準的な申請手続きの流れ
長期優良住宅建築等計画等、計画の作成→登録住宅性能評価機関へ事前審査依頼→登録住宅性能評価機関の審査→登録住宅性能評価機関から「適合証」受理→所管行政庁へ認定申請(適合証も提出)→所管行政庁の審査→所管行政庁から認定通知書受理
これが申請手続きの流れですが、個人で行うとなれば、少し複雑かもしれませんので、ハウスメーカーや工務店に依頼して長期優良住宅を建てた場合には、ハウスメーカーや工務店に依頼すれば申請手続きを代行してもらえますが、ハウスメーカーや工務店に手数料を請求される場合がありますので、事前によく打ち合わせを行って下さい。
長期優良住宅の認定を受けてない住宅は大丈夫
長期優良住宅の認定制度が普及していくなか、認定を受けていない住宅の安全性や快適性は大丈夫なのでしょうか。
近年、大手ハウスメーカーはコンプライアンスを守るために、性能の良い住宅づくりに力を注いでいるのは事実です。
また、設計事務所や建築家、工務店も長期優良住宅の認定を受ける受けないにかかわらず、耐震性、バリアフリー性、省エネ性に配慮した家づくりをしているところが多くあります。
このことから、長期優良住宅の認定を受けていなくても安全・快適な家づくりをしています。
ただし、長期に住まいを使っていくには、認定を受けている、受けていないに関係なく、住んでいくなかでのメンテナンスが重要となってきます。
まとめ
住宅の質や税制面で、なにかとメリットの多い長期優良住宅です。
個人で認定を受けるとなると少し複雑な面がありますが、それでも長期優良住宅にするメリットが多いですので、新築あるいは既存の住宅をリフォームして、長期優良住宅にしてみませんか。