「ゼロエネルギー住宅(ZEH)の徹底解説」
ゼロエネルギー住宅の定義
目次
1.ゼロエネ住宅のメリット
2.ゼロエネルギー住宅の定義
3.ゼロエネルギー住宅とエネルギーの関係
4.ゼロエネ住宅の補助金制度
5.ゼロエネルギー住宅のメリットと生活の変化
6.準防火地域でゼロエネ住宅を建てるには
7.ゼロエネ住宅と健康
8.ゼロエネ住宅とAIF認証の関係
9.ゼロエネ住宅の業者選び
10.ゼロエネ住宅のコスト
11.ゼロエネ住宅を建てる前によく検討することが大切
以上の構成にて、解説していきます。
ゼロエネ住宅を建てる前によく検討することが大切
ゼロエネルギー住宅は今まで述べてきように、普段の生活を送るうえで消費するエネルギーと、創り出すエネルギーを比較して消費するエネルギーと創り出すエネルギーとが等しいあるいは、創り出すエネルギーの方が多い住宅のことをいいます。
しかし、それ故に建設費用も高く、いろいろな要件を満たすことが必要な住まいですので、ゼロエネルギー住宅を建てる際には十分すぎるほどの検討と打ち合わせが必要となってきます。
ゼロエネルギー住宅の普及
環境保護の視点や家計の光熱費節約の視点からすれば、できる限りエネルギーの消費は抑えた方が望ましいことは多くの皆さんはわかっていると思います。
こういったことを踏まえて、日本においても、「住宅の省エネ化」が重要課題とされています。
日本政府の方針として、2020年までには「省エネ住宅の義務化」を目指すものとされています。
これにより、国の法令が規定する一定の基準を満たしたものでなければ、ほとんどの建築物は新しく建てることができなくなります。
さらに、2030年頃までには、新築の住宅に関しては、ゼロエネルギー住宅を標準的なものにすると言われています。
現在では「省エネの住宅は当たり前」となっていますが、近い将来には「ゼロエネルギー住宅が当たり前」という時代になってきます。
これにより今までは「省エネ」を目指すことに住宅関連業界は大きな関心を寄せていたのですが、今後は、ゼロエネルギー住宅の開発に力を注ぐことになり、ハウスメーカーや住宅設備機器会社だけでなく、家電メーカーや電子機器メーカーも開発競争に参入してくるものと思われます。
電機メーカーがゼロエネルギー住宅開発に参入
2015年10月10日付けの日本経済新聞に次のような報道がありました。
『ゼロエネルギー住宅「家まるごと」提案強化、戸建てや電機連携加速』
「エネルギー消費量が実質ゼロとなるゼロエネルギー住宅を巡り、太陽電池などの製品を手掛ける電機、電子機器大手と戸建て住宅メーカーの連携が加速している。
三菱電機は工場内に、一条工務店とゼロエネルギー住宅を新設した。
京セラはミサワホームと組み、太陽電池と蓄電池を使って電気やガスのエネルギーを自給するモデル住宅の実験を始める」(抜粋)
家電・電機メーカーにとって、家電製品の価格競争により消耗戦を繰り返しているのが現状です。
そこで政府が大きな関心を寄せている、ゼロエネルギー住宅における高効率の省エネ電機設備に関連した分野は今後、有望な市場の一つとなっています。
日経新聞の報道では、三菱電機、京セラそしてパナソニックといった電機メーカーの取り組みが紹介されています。
三菱電機においては、エアコンやテレビなど家電製品と接続できるHEMS(家庭用エネルギー管理システム)に力を入れており、また京セラは、ミサワホームとタッグを組み、太陽電池と蓄電池と組合すなど開発が盛んに行われています。
しかし、いくら成長する見通しのあるゼロエネルギー住宅関連であっても、電機設備単独での商品販売では利益を確保するのは困難と言えます。
例えば、太陽光パネルはすでに価格面での競争が激しくなってきています。
そこで電機メーカーは、住宅関連会社と連携することで、ゼロエネルギー住宅をトータルで提案することによって、他社との差別化を図り競争に勝ち抜いていこうとしています。
さらに最近では、ヤマダ電機やジョーシン電機など、大手電気量販店もゼロエネルギー住宅に参入を試みているのも事実です。
そもそもゼロエネルギー住宅とは何か!
ゼロエネルギー住宅は、今まで述べてきたように、環境保護等の観点からするとメリットは大きいものです。
しかし、住宅業界の多くの人は、現在経済産業省が進めようとしている方向性に懸念を抱いているのも事実です。
まず、この「懸念」を検証する前に、まず経済産業省が策定したZEH(ゼロエネ住宅)の定義について、その要点をもう一度列記してみます。
- 消費するエネルギーと創り出すエネルギーを比較して、後者が多いかあるいは両者が等しいこと。
- 国が規定する程度の断熱性能があること。
- 換気や日射制御など、自然エネルギーを取り込むための設計がなされていること。
- 省エネデータを計測するための装置が設置されていること(HEMSの設置)。
- 太陽光発電システムなど、エネルギーを創り出す設備が設置されていること。
この1.についてですが、消費するエネルギーと創り出すエネルギーを比較して、後者が多いか、あるいは少なくとも両者が等しいという状態をつくりあげるためには次の方法を考えることができます。
まず、「省エネ」という方向性で言えば、要点2.と3.がこのことを示しています。
つまり、建物の断熱性能を向上させる、あるいは建物に自然エネルギーを取り込む仕組みを設置したりすることにより、消費するエネルギーを抑え、「省エネ」を図るということです。
次に、「創エネ」の考え方です。
要点の5.がこのことを表しており、例えば、太陽光発電システムといった方法でエネルギーを創り出すといったことです。
これらの考え方を実現させ客観的に確認することができるものが、要点4.の項目なのです。
しかし、住宅業界においては、これらの考え方について懸念を抱いているのです。
その懸念というのが、極端に言えば「省エネ、創エネいずれにおいても、設備機器の比重が高いのではないか」ということです。
つまり設備投資の金額が大きくなっているのではないかということです。
創エネを図る太陽光発電システムやHEMSはいずれも設備機器です。
「自然エネルギーを取り込むための設計」を具体的に言えば、「開口部通風利用システム」や「屋内と屋外の温度差による換気制御システム」、「自動制御式可動ルーバー」、「床下冷熱利用システム」等ですが、いずれも設備機器にかかわるものばかりです。
しかし、これは産業の発展を図ることを任務とする経済産業省が策定した定義ですので仕方がないとはいうものの、それにしても設備機器に重点を置き過ぎる感はあります。
省エネ住宅づくりの大前提は「建物」です!
家づくりを検討されている方やリフォーム・リノベーションを検討されている方が、「省エネ住宅」について以下のような疑問をもたる方が多くいます。
「家を造りにあたり予算があって、限られた予算の中で、太陽光発電システムを備えることと、断熱材の質を良いものとすることのどちらを優先させるべきか。」といことです。
確かに予算に限りがあると、「あれかこれか」という選択を迫られることが多くあります。
しかし、省エネ住宅に関するこのような疑問は、比較の対象が異なっていることを認識いていないことから生じるものです。
太陽光発電システムは、「設備機器」に関わるものであり、それに対して断熱材は「建物全体」に関わるものです。
これにより「設備機器」と「建物」では耐用年数が違ってきますので、考え方も異なってきます。
太陽光パネルや蓄電池、省エネ家電といったものは設備機器です。
このような設備機器の耐用年数は10年から20年です。
設備機器は、壊れたりした場合に取り換えが可能です。
また、その設備機器が普及するにつれて価格も下がってきますので、最新のものに入れ替えることも可能となります。
例えば、太陽光パネルは、ここ数年で3割以上値段が下がってきています。
一方、屋根や柱・壁・窓・床・天井などは建物です。
断熱材は屋根材や壁材と一緒に使われていますので建物にかかわるものです。
建物は、しっかりと造られたものであれば、耐用年数は50年以上です。
壁や屋根・柱・天井といった建物の一部は、一度造られると取り換えなどが容易ではありません。
例えば、建築当時に断熱材を質の良いものを使ったとしても費用は数十万円で済みます。
しかし、建物が完成して数年経った後に断熱性能を向上させるためにリフォームを行ったとすれば、数百万円の費用を考えなければなりません。
このように、完成後に建物自体の質を向上させるために手を加えるとなると、相当な費用がかかってしまいます。
設備面において、エネルギーを創るために太陽光発電システムを取り入れても、建物自体の断熱性能が悪ければ、エネルギーが建物の中から外へ容易に排出されれば、それはもはや省エネ住宅とは言えません。
このことから、質の違う両者を単純に比べて「あれかこれか」と考えても意味がありません。
後から変更できないモノを重視する
省エネ住宅を造る大前提は、「建物」が重視という適切な考え方は、「最初に、建物が完成後に取り換えをするのが簡単ではないところを重視しましょう。そして予算に余裕がでてくれば設備面での性能を向上させましょう。」ということとなります。
最も重視しなければならないのが、住宅自体において、省エネ化を十分に図ることです。
例えば、断熱材は質の良いものを採用し、窓やドアには断熱性能の高いものを取り入れ、さらに屋根や基礎・壁・天井などの断熱も怠らないことです。
こうすることで、建物自体の断熱性能が向上し、少ないエネルギーでも快適な住まいづくりが実現できるのです。
また、「パッシブ」という、夏の陽ざしを和らげるために軒を工夫したり、通風を調節するために窓の位置を工夫したりして、設備機器に依存しないような設計方法もあります。
まとめ
地球温暖化により、世界各地で、異常気象が発生しています。
この日本でも例外ではなく、近年巨大化する台風、日本近海の海水温度の上昇など色々な現象が起っています。
そこで世界各国で推奨しているのが、クリーンエネルギーです。
世界的にクリーンエネルギーを普及させる運動が加速しています。
日本でも様々な取り組みが行われ、エネルギー需要のバランスを調整する動きがあります。
ゼロエネルギー住宅(ZEH)は、このような取り組みを基本として行われている国の施策なのです。
しかし、ゼロエネルギー住宅の定義は難しく、住宅の性能もかなりアップしなければなりません。
そのため、ZEHビルダーと呼ばれる専門知識を持ったモノで、SIIに登録されている業者でなければ、ゼロエネルギー住宅とは認定されず、補助金の対象ともなりません。
また、補助金の対象となっても必ず補助金が受け取れるとは限りません。
ゼロエネルギー住宅の基本概念はあくまでも、消費エネルギーと創エネルギーの比率が、消費エネルギーの方が小さいあるいは等しいとされています。
そのため、いろいろな省エネ設備や建材を採用する必要があります。
ゼロエネルギー住宅を検討する場合は、建物の費用を十分検討しなければいけないことはお分かりになったと思います。
しかし、費用を掛けるだけの建物であるともいえますので、今後、標準化するであろうと思われるゼロエネルギー住宅ですので、情報を集めて理解しておくことをおすすめします。
ゼロエネルギー住宅(ZEH)の徹底解説 1~6