健康・エコな暮らしのポイント
健康で省エネな家をつくるための要件とは、どのようなものでしょうか。
東日本大震災を経験した私たちは、節電・節水などの省エネに配慮したエコ住宅の必要性を実感しました。
また、ようやく手に入れたマイホームにおいて、住まい手が不快と感じたり、あるいはシックハウスなどの健康被害を発症するものであってはならないのです。
これらの問題の多くは、室内環境に起因している場合が多くあります。
そこで、これらの問題に対して考えいくことにしましょう。
住まいと健康の関係
世界保健機関(WHO)が定める居住環境とは、「家族や個人の身体および、精神の健康や社会福祉のために必要、または要求される、すべての必要なサービス、施設、設備、装置を含む構造で、シェルターや周辺地域に人類が利用する物理的構造」であると定義付けされています。
さらに、世界保健機関は、健康とは病気にならないことだけを指しているのではなく、「健康とは単に病気でない、虚弱でないというのみならず、身体的、精神的そして社会的に完全に良好な状態を指す」とされています。
従って、健康であるためには、住宅やコミュニティが提供する私たちの日常の生活環境そのものが、健全でならいといけないということです。
健康的な住まいとは
WHO欧州地域事務局(WHO欧州)は、住宅と健康に関する大規模な疫学調査を欧州8都市で実施したのです。
その結果、空気室に関しては、不十分な換気と喘息症状、受動喫煙と子供の急性気管支炎や肺炎、湿気やカビと喘息や気管支炎・うつ症状・片頭痛等との関連性が示唆されました。
採光に関してですが、自然光の採光不足とうつ症状や慢性的な不安との関連性が示唆されたのです。
その他には、夜間の安全性に対する不安と循環器系の症状やうつ症状、周囲の騒音と睡眠障害やうつ症状との関連性などが示唆され、また、空気汚染に関する要因は既知の部分が多いですが、光や音、安全性に対する不安と健康との関連性が示唆されました。
住宅に関係する主な健康リスク要因として、室内空気汚染による呼吸器や循環器の疾患があります。
換気が不十分だと、結核などの空気感染性疾患の伝播リスクを増加させ、アレルギーや喘息に関係する室内の空気汚染物質や湿気を増大させるのです。
また、住宅の品質や設計が不十分であると、極度の暑さや寒さによって人体への負担も増加するのです。
健康な住まいをつくるには、室内空気汚染の防止、適切な換気、過剰な湿気の防止やカビ対策、受動喫煙防止、快適な光や音環境はもちろんですが、安全性や近隣地域などに関しても十分な配慮が必要です。
健康維持増進住宅推進の必要性
高齢化の進行する私たちの国は、医療費、介護費の増加が深刻な政治・社会問題となっています。
政府の予測によると、2025年、大阪万博の年には、医療費と介護費は2010年比でそれぞれ約2倍、約3倍に増加すると予想されています。
この問題を放置すれば、日本の財政が破綻に向かうと言われています。
日本社会が抱えるこの大きな課題の解決のためには、医療分野は当然ですが、ヘルスプロモーションに関わるあらゆる分野からの参加が必要とされています。
そのため、健康的生活の基盤を提供する建築分野も積極的な貢献を果たすことが求められているのです。
国土交通省では、健康を支える生活基盤としての住宅やコミュニティの重要性に着目し、このような住宅・コミュニティ整備の推進を政策課題として取り上げられています。
住宅の断熱と健康
室内事故において、冬期に死亡率が増加することは広く知られています。
自宅と病院に着目して、月別の死亡率をですが、ガンを除く心疾患・脳血管疾患などいずれの疾患においても、死亡率は自宅でも病院でも上昇します。
しかし、特に心疾患においては、自宅における上昇率が著しく高く、この原因としては、病院に比べ冬期における自宅の室温が低いためであることが指摘されています。
WHOの調査で、同じく冬期における死亡率増加のヨーロッパ諸国における国際比較ですが、寒冷地に比べ温暖地における死亡率の増加傾向が著しいことが特徴で、この原因として、寒冷地では冬期の暖房環境が十分に確保されているのに対して、逆に、温暖地ではこれが不十分で、冬期の屋内環境が貧弱であることが指摘さています。
暖房水準について言えば、北海道と本州・四国・九州の関係がこれに対応するのです。
まとめ
世界保健機関が定めている健康とは、「単に病気でない、病弱でないということだけでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態を指す」とあります。
つまり、健康であるためには、住宅やコミュニティが提供する私たちの日常の生活環境そのものが、健全でなければならないとされています。
健康な住まいの条件の一つとして、室内空気質ガイドラインがあります。
これは、湿気とカビの室内空気質ガイドラインと汚染物質の室内空気質ガイドラインを定めており、湿気の量やカビの量と健康影響との関係については、現在のところ科学的知見が不足しています。
よって、キッチリとした指針値を定めることができないとされていますが、湿気やカビを避けるための6つの心得や、建物の適切な設計施工・維持管理・温度制御・換気の重要性を示しています。
6つの心得とは、
1.過剰な湿気やカビを除去する。
2.少なくとも1日に2~3回程度窓を開ける。
3.機械換気システムを停止しない。
4.浴室や台所では換気扇を使用する。
5.部屋や壁が冷えないようにする。
6.水漏れ箇所などがないようにする。
となっています。
これにより、冬期の死亡率を減少させ、暖房水準についても、北海道と本州・四国・九州の地域差を無くすことが望ましいとされています。