自然の光と風を利用する住まいとは

自然のエネルギーを活かした設計方法を「パッシブデザイン」といいます。

 

「自然光が差し込む明るい部屋にしたい」、「自然の風が住まいを通り抜ける住まいにしたい」こうした願いを叶えられることができるのが「パッシブデザイン」です。

 

極限までエアコンやストーブなどに頼らない暮らしができれば、どんなに快適か何となく想像がでると思います。

省エネな暮らし、電気やガスに頼らない暮らしを実現させるにはどのような考え方をすればよいのか調べていきましょう。

 

風通しの良い家、日当たりの良い家

「家のつくりやうは 夏をむねとすべし」、この言葉は誰もが一度は耳にしたことのある徒然草の一節です。

 

「日本の気候を言いえて」と膝を打つ兼好のことばですが、ふと現実に戻って居住環境を思い返せば、“それは昔のこと”と思う方も多いと思います。

しかし、今後の更なる省エネルギーとピーク電力の削減を考えたとき、徒然草に描かれているような日本古来の知恵で省エネと心地よさを実現することが求められていると言えます。

 

「高断熱・高気密」なのか「風通し」なのか

住宅におけるエネルギー消費量として、沖縄などを除くと暖房の比率が高く、このため、「高気密・高断熱」が住宅の省エネルギーの基本といわれています。

 

しかし、日本の伝統的な「風通しの良い住まい」、「気候が良ければ窓を開けはなし、季節の香りを感じる」という「心地よさ」も忘れてはいけないのです。

 

また、「高気密・高断熱」では、24時間換気が重要となる点にも注意が必要となります。

 

今後は、「風通し」と「高気密・高断熱」の両立を雨戸や障子、縁側、蔵などの日本古来の知恵と現在の技術を融合して、心地よい住まい方を実現していくことが求められているのです。

 

例えば、断熱雨戸などの採用、断熱性、気密性の高い木製サッシ+高性能Low-eガラスの大きな開口により、夏の通風性能と冬の断熱性能を切り替えるなどの工夫が重要となるのです。

 

冬は温かく、夏は涼しく、そして日中は明るく

自然の力を住まいに取り入れるのが、パッシブデザインです。

そのパッシブデザインのひとつの特徴は、「保温性」なのです。

 

冬の寒さを凌ぐためには、室内の温度を保つことです。

室内の温度を上げるためには、電気ヒーターや石油ストーブや各種ファンヒーター、ホットカーペット、こたつといったさまざまな電気製品を使用することになります。

また、室温を保つためにこれらの家電を使い続けることになります。

 

しかし、人工の設備に頼らないパッシブデザインでは、窓から差し込む日の光の量を多くする他、壁や天井、窓、床などの冷気の通り道にガードを造ることで、保温性の高い住まいを実現させるというものです。

 

家を形作る基礎の段階で断熱性の高い素材を選ぶことで、住まいそのものの保温性を高めるのです。

 

人工的な熱ではなく、太陽熱で温められた空気を逃がさず、自然エネルギーを活用した快適な空間を造り上げていくのが、パッシブデザインの手法なのです。

 

次に、風の流れを活用するということです。

温暖化により年々気温が上昇している夏場は、エアコンや扇風機といった空調設備が欠かせないと思います。

また、夏場はエアコンを1日中つけたままというご家庭も多いと思います。

 

夏場におけるパッシブデザインの考え方は、室温上昇の原因となる太陽光をできるだけ室内に入れないようにし、風向きを考えながら窓やドアの位置を決め、天然のエアコンとして風を室内に吹かせるというものです。

 

パッシブデザインでは、日中は電気をつけなくても明るい室内にするということです。

日当たりを考え、窓の位置や数を決めることで、太陽光が必要な場所に降り注ぐようにするのです。

 

また、太陽光の入り口を確保するだけでなく、光を拡散させる工夫を施すことが重要となってきます。

これにより、取り入れた太陽光を部屋全体に広げることにより、電気を使う時間を減らして省エネな暮らしを実現するというものです。

 

夏を涼しくする工夫

しかし、いくら自然の風を取り入れたとしても、夏の陽ざしは、かなりの温度があります。

そこで夏を涼しくさせる工夫が大切となってくるのです。

 

最近、小学校や公共の施設などでよく見かけるのが、緑のカーテンといわれるものです。

 

日本の伝統的な知恵として、広葉樹を庭に植えることがあります。

夏は木陰により、日差しを和らげ、涼しい風を家に呼び込みます。

また、冬には、葉が落ち日差しを家に導いてくれるのです。

 

集合住宅では、屋上緑化を行っているところもあります。

屋根面の陽射しを植栽から蒸発潜熱で相殺することにより、最上階の部屋の寝苦しい夜を緩和する効果がみうけられます。

 

また、日本の庭先で良く行われていた、夏の夕方に打ち水で夕涼みでしたが、これも昔からの涼を得る方法の一つです。

 

これは、水が気体に変化するのに必要な潜熱を周囲から奪う原理を利用したものです。

例えば、水1ℓを打ち水したとします。

 

水1ℓ=1㎏を25℃→40℃に加熱する熱量と蒸発する熱量が、冷却効果として約2360kjとなります。

つまり、6畳用エアコンの定格冷房能力が2.2㎾ぐらいですから、このエアコン約18分間分の冷却効果があることになります。

 

まとめ

日差しは住まいの重要な要素です。

夏は太陽高度が高く昼間の陽射しを少し深い庇(ひさし)で、簡単に遮ることができます。

同じ庇でも、冬の低い太陽高度で部屋の奥まで取り入れることができます。

夏の陽ざしで問題となるのは、夕刻の西日ですが、先人の知恵としては、簾(すだれ)やヨシズのような可変の日射コントロール装置で、日陰と陽射しを両方とも享受することもできるのです。

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