省エネに向けた住宅の断熱性

住まいの省エネを考える上で、断熱性・高気密性は外せない条件のとなっています。

 

東日本大震災の際には、被災地において長期にわたって電力やガス、灯油といったエネルギー供給が途絶えたのです。

その状態で室温を調査したところ、断熱処理が施されていない住宅では、5℃前後まで室温が低下していたのです。

これにより、住宅の断熱性・高気密性の重要が立証され、さらに断熱性・高気密性は省エネに重要な役割を果たしていたのです。

 

そこで、現在の住まいの断熱水準はどれくらいなのか、断熱材や気密材にはどのようなものがあるのか調べていきましょう。

 

住まいの断熱性と気密性

現在的な住宅の室内環境は、屋外の熱・空気や日差しを取り入れたり、遮ったりしながら、その過不足を人工的な暖房・冷房・換気で補うことで整えることができるのです。

 

断熱・気密は、熱や空気、そしてそれと一緒に動く湿気や汚染物質の流れを調節して、快適な住空間を効率よくつくるうえで、重要かつ基本的なしくみなのです。

 

熱の通しにくさを断熱性、気体の通しにくさを気密性と呼びます。

そのために用いる材料が断熱材と気密材です。

 

どんな材料も断熱性をもっていますが、代表的な断熱材であるグラスウール(密度16K)50㎜の断熱性は、コンクリートなら1.5m、木材でも150㎜以上の厚さに匹敵するほど強力なのです。

 

しかし、どんなに断熱性が良い(熱伝導率が小さい)材料も、壁・床・屋根などの部位にあった材料や工法の選択、さらには丁寧な施工がなされていないと、壁や床など部位の断熱性(熱貫流率)にムラが生じます。

その上、間取り・住まい方や換気方法と調和した設計でなければ、建物全体の換気も考慮した保温性能(熱損失係数:Q値)をつくることはできないです。

 

このような考え方は、健康的で、快適な室内環境を効率よくつくるための前提条件になりますが、この「効率」は裏返すと加熱や加湿の無駄を減らすことを意味します。

断熱や気密が不十分だと、冷暖房に無駄なエネルギーを使うことになり、温熱快適性を悪くしたり、結露を生じやすくさせて健康にもマイナスとなるのです。

 

断熱・気密は「隙間なく包む」という点で非常に重要ですので、どこかに隙間や切れ目があると、弱点から熱や空気が逃げてしまうことはもちろんですが、温度と湿度の均衡を崩して、結露や温熱環境悪化などの問題を起こす危険も増えてくるのです。

 

また、いくら断熱がよくても、断熱も度を越すと室内の広さを圧迫し建物の構造体と場所の取り合いになったり、建築費に跳ね返りますから、材料・部位・建物全体の各段階にバランスのとれた選択が大切といえるのです。

 

断熱材と気密材

断熱材も気密材もともに、室内空間を包み込むための材料です。

また面をカバーする連続性の素材が必要とされます。

 

断熱材に使われる素材には、グラスウールやロックウールなどの無機繊維と、スチレンやウレタンなどの発砲プラスチック、セルロース繊維などの有機繊維などが一般的に使われています。

 

また施工方法と部位ですが、施工方法には充填・外貼り・内貼り・吹き付けやこれらを併用する場合があります。

 

次に気密材ですが、気密材には住宅用プラスチック系防湿フィルム(JIS A 6930)またはこれと同等以上の防湿性、耐久性、強度等をもつ透湿防水シートや合板・ボード類、プラスチック系断熱材、乾燥木材等の使用が認められています。

 

平成21年の住宅の省エネ基準改正で、「気密住宅」に関する規定はなくなりましたが、実務上はこれを守られていることが多くあります。

 

断熱性能は内断熱と外断熱どちらが良いの

断熱性を持たす場合に、よくこういった質問や疑問を持たれる方が多いのですが、基本的には、特長をより理解した上で、住まい方やコストパフォーマンスを考えて選ぶことが大切なのです。

 

建築では構造体が最優先されます。

そのため、断熱材は骨組みを邪魔しないよう、構造体の厚みの中に断熱材を納めたり(充填)、室内側に設ける(内貼り)工法が主流だったのです。

しかし、近年は省エネ・内部結露防止・温熱環境の改善などを前面に打ち出す傾向があるため、断熱材を外側に設ける外貼り工法が増えてきています。

 

外貼りは、充填や内貼り工法のように断熱材が構造体に分断されて不連続になるということが少なく、室内側の表面温度むらも減りますので、保温効率と温熱快適性の改善に有利と言われています。

 

また、コンクリート造や組積造建築物では、構造体の熱容量(温まりにくさ、冷めにくさ)を利用できることから、環境工学ではその外貼りを特に「外断熱」と呼んでいます。

 

外断熱は、保温上の弱点を防ぎやすい、温熱環境を安定させやすいなどの利点がありますが、一方で、発停を繰り返したり(間欠空調)、一部分だけの部屋だけ運転(部分空調)したりすると、メリットが失われることがありますので、住まい方やコストパフォーマンスを考えて選択する必要があるのです。

 

住宅の気密性能は高い程良いの

住宅の気密性能ですが、住まいの全般的な性能を把握しておくことが重要となるのです。

 

建物構造や建具の気密性が低いと、室内外の温度差による煙突効果や外部風により隙間風が入って、室内の熱環境を悪くする上に、熱損失も増えてしまいますので、省エネ性が損なわれてしまいます。

 

また、居住者が必要とする以上に外気が室内に入ってしまうと、冬季には乾燥が、夏季・梅雨期には湿潤が進んで健康性も失う場合があります。

 

したがって一般的に気密性は高いほうが良いとされ、建物全体の気密性を表すC値(相当隙間面積)が施工の緻密(ちみつ)さを表す指標として、宣伝や広告に使われているのです。

 

また、時にはこの値で競争する場面などもあるのです。

しかし、実際にはC値が1を切る(例えば床面積が150㎡の住宅全体の相当隙間面積の合計が150㎠未満)まで、気密性を良くしても実感としては差は小さく、かえってコストパフォーマンス的には下がってしまう場合がありますので、お勧めはできません。

 

まとめ

現在的な住宅の室内環境は、屋外の熱・空気や日差しを取り入れたり、遮ったりしながら、その過不足を人工的な暖房や冷房・換気といった方法で補うことで室内環境を整えています。

 

断熱・気密というのは、熱や空気、そしてそれと一緒に動く湿気や汚染物質の流れを調節して、快適な室内を効率よく造るうえで重要かつ基本的な仕組みです。

 

熱の通しにくさを断熱、空気の通しにくさを気密と言いますが、そのために用いるのが断熱材と気密材です。

これらの使い方しだいで、快適な住環境が生まれるのです。

 

断熱材の特長をより理解した上で、住まい方やコストパフォーマンスを考えて選ぶ必要がありますし、住まいの全般的な性能を把握しておかなければ、適切な気密性を得ることができないのです。

 

しっかりとメリット・デメリットを理解し、住まい方やコストパフォーマンスを考えて選択する必要があります。

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